近年、電力供給を従来の電力会社に頼らず、自家発電（オフグリッド）でまかなうケースが増えています。新築住宅を建てる際にオフグリッド仕様にしたり、オフグリッドにするために増改築する例もあるようです。オフグリッドとはどのような仕組みなのでしょうか。ここではオフグリッドとは何か解説し、オフグリッドの導入例やメリット、デメリット、今後の課題などについて触れます。オフグリッドに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

オフグリッドとは

オフグリッドとは、電力会社に接続していない状態で発電することです。オフグリッド（off grid）は、電力会社が運営する送電網（グリッド）から切り離され、自ら電力を生産している状態を指します。

オフグリッドでは、主に太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを利用して、自給自足の電力を確保します。オフグリッドの導入は、電気料金の削減や災害時の停電対策として注目されており、普及が進んでいます。

オフグリッドは、環境への負担を軽減し、山間部など送電網の設置が難しい地域でも、電力需要を満たす手段として注目されています。

オフグリッドの導入例

オフグリッドの具体的な導入例としては、道路に設置された電光掲示板や街灯が挙げられます。これらは自給自足の電力を利用するため、災害時にも停電の影響を受けにくいという特徴があります。

また、家の屋根などに太陽光パネルを設置して自家発電するケースも増えているようです。欧米では、送電網が整備されていない地域での導入が進んでいます。

日本ではすべての電力をオフグリッドでまかなう方法のほか、電力会社の系統電力や蓄電池、ディーゼル発電機との併用による導入方法も増加しています。

オフグリッドのメリット

オフグリッドの導入には、コストや環境面で多くの利点があります。主なメリットは以下の通りです。

・電気料金の削減
・環境への負荷軽減
・災害時の停電対策
・過疎地域や離島での電力供給手段
・遊休地や空き家の有効活用

これらのメリットについて、さらに詳しく解説していきます。

電気料金の削減

オフグリッドシステムでは、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用して、電力を自給自足します。このため、電力会社からの電力供給を減らすことが可能なので、電気料金を抑えられます。

エネルギー資源の価格が変動する中でも、再生可能エネルギーを活用したオフグリッドは、その影響を受けにくいと言えるでしょう。また、太陽光発電システムやパネルなどの価格が下がっていることも、オフグリッドが普及する一因となっています。

環境への負荷軽減

オフグリッドでは、太陽光や風力といったクリーンエネルギーを使用するため、化石燃料に依存することが少なくなります。これにより、CO2（二酸化炭素）排出量を削減し、環境への負荷を軽減することが可能です。

2015年のパリ協定で温室効果ガス削減の目標が設定され、日本は2020年10月に2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しました。オフグリッドを推進することによって、温室効果ガスの削減に寄与し、地球温暖化対策としての役割も果たします。

災害時の停電対策

オフグリッドは、災害時の緊急用電源としても活用できます。日本は世界的にみても災害の多い国で、地震や台風による被害が頻繁に起きており、大規模な停電を伴う自然災害が頻発しています。

停電は企業の操業にも影響しますが、オフグリッドを導入すれば、BCP（災害時に操業を継続するための準備）対策としても有効です。

過疎地域や離島での電力供給手段

過疎地域や離島では、電力会社の大規模な系統電力との連携が難しい地理的条件が存在します。そのため、高コストでCO2排出量の多いディーゼル発電に依存することが一般的です。

再生可能エネルギーを活用したオフグリッドシステムを導入することで、これらの地域における電力供給の選択肢を広げられます。

遊休地や空き家の有効活用

近年、地方の人口減少に伴い、遊休地や空き家の増加が問題視されています。観光資源が豊富であっても、電力などのインフラが整っていない場合、オフグリッドを導入することで電力インフラを整備し、遊休地や空き家の活用につなげることも可能です。

オフグリッドのデメリットと課題

オフグリッドには多くの利点がありますが、いくつかのデメリットや課題も存在するのが現状です。

発電量が自然条件に左右される

オフグリッドでは、太陽光や風力を利用した発電がメインになります。太陽光発電では、曇りや雨が続くと発電量が極端に下がりますし、風力発電の場合は風がないと発電できないといった問題があります。

つまり、オフグリッドでは安定した電力供給が難しいのです。安定した電力を確保するためには、発電した電気をバッテリーに貯めたり、ディーゼル発電機を併用したり、不足する電力を電力会社の電力で補うなどの工夫が必要です。

初期費用が高額

オフグリッドは設備に費用がかかります。太陽光発電の場合に必要な、太陽光パネルやパワーコンディショナー、送電設備などはかなり高額です。そのため、多額の初期費用がかかることがデメリットです。

国や地方自治体が補助金を出していますが、全ての費用を補助金でまかなえるわけではない点に注意が必要です。

設備のメンテナンスが必要

オフグリッドでは、発電設備と蓄電設備を設置しなければなりません。これらの設備を維持するためには、定期的なメンテナンスが求められます。メンテナンスは専門業者に依頼することも可能ですが、それなりのコストがかかります。

オフグリッドに活用できるエネルギー

オフグリッドの主な電源は、現在のところ太陽光発電が主流です。その他にも、風力発電やバイオマス発電などの利用が進められています。それぞれの電源について詳しく解説します。

太陽光発電

太陽光発電は、シリコン半導体を用いた太陽光パネルを利用して、太陽の光エネルギーを電気に変換する発電方式です。日本は2021年度において、太陽光発電の導入容量が世界で第3位となっており、オフグリッドシステムの主要な電源として広く活用されています。

風力発電

風力発電は、風のエネルギーを利用して風車のブレードを回転させ、その回転によってナセル内の発電機を動かし電気を生成する方法です。風力発電には、陸上に設置される陸上風力発電と、海上に設置される洋上風力発電の2種類があります。

安定した風があれば、風力発電は離島や僻地でも電力供給が可能です。風力発電というと、高い塔の上に大きなプロペラが回っている光景が目に浮かびますが、従来の大型の風力発電機は費用が高くメンテナンスも困難なので、最近では設置が容易で安価な小型の風力発電機が増えています。

大型の風力発電機は低周波が発生するため、近隣住民の健康被害が問題となっていますが、小型の風力発電機は低周波が発生しないため、健康被害もありません。

バイオマス発電

バイオマス発電は、廃材や食品廃棄物などのバイオマスを燃焼またはガス化して、電気に変換する方法です。この発電方式はCO2削減に寄与し、廃棄物の再利用が可能なエネルギー源として注目されています。

北海道のある企業では、バイオマス発電と太陽光発電を組み合わせた電力を利用して、植物の栽培や水産物の養殖に関する実証試験を行っています。

廃熱発電

2024年3月、NEDOは「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」において、産業廃熱や地熱などの未利用廃熱を活用した、発電システムのオフグリッド化に成功したと発表しました。この発電システムはカーボンニュートラルの実現に寄与することが期待されており、企業や公的機関のレジリエンス事業への活用も見込まれています。

まとめ

オフグリッドによる発電は、電力会社の電力供給に頼らない新しい電力供給システムとして注目されています。オフグリッドにはさまざまなメリットがある反面、デメリットや解決すべき課題もあるので、今後少しずつ改良されながら普及していくことが見込まれます。災害時の備えとなるオフグリッドは、台風や地震の多い日本にとって、大きな助けとなるでしょう。

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